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金融政策の有効性 [(通信教育)経済原論]



昨年秋のスクーリングでは、伊藤先生の「経済政策」を受講しました。
8回目のマンデル・フレミングモデルでは、変動相場制の下では、金融政策はGDPを増加させると習いました。
その経路は、次の通りです。

国内での金融緩和により、国内利子率が世界利子率よりも下がる→ 資本が海外流出→円安→ 輸出増加 → 景気の上昇

鈴木淑夫氏によれば、小泉政権下の円安バブルは、まさに上に書いた金融政策が効いた例のようです。

講義では、日本経済が流動性のワナにはまっているために金融政策が効かなくなっている可能性を指摘していました。
すなわち、IS-LM曲線の経済モデルでLM曲線が水平になってしまっている状態です。

実際、日銀の資金循環統計 、内閣府 年次経済財政報告 などを見ると、企業部門(非金融)では、資金は余っており、対照的に不足しているのが公的部門です。民間企業部門は国内で有効な投資先を見出しにくくなっているものと推測されます。

民間部門のお金が余っている状況での金融緩和が、そのまま民間の設備投資を促進するという経路での景気対策にはならないが、円安を誘引するという経路で間接的に景気を刺激するということが期待されているのだと思います。

しかしながら、各国の通貨安競争→重商主義競争(中野剛志・柴山桂太 グローバル恐慌の真相 集英社新書)ともいえる状況で、この金融緩和がどこまで有効なのかはよく分からないところです。

むしろ、私には、水野和夫氏(埼玉大・大学院 客員教授 現代アメリカ経済論担当)の「100年デフレ」説が、説得力をもって聞こえます。
水野氏の主張(この経済危機は近代の終わりであり、従来型の経済政策は有効ではない。先進国では金融政策の如何に関わらず利子率が下がり続け、バブルを誘発して危機を深めるだけである)は、やや難解なところもあり、また主流派の経済学からは疎んじられているようですが、私は一読の価値があると思います。
100年デフレ(日経文庫)は買ったまま積ん読ですが、次には読みたいです。

日本の経済針路―新政権は何をなすべきか

日本の経済針路―新政権は何をなすべきか

  • 作者: 鈴木 淑夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/07/08
  • メディア: 単行本


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コメント 4

Silvermac

昨日の「クローズアップ現代」でサンヨーの白物家電のブランド名込みで中国企業が買収した話が出ていました。
パナソニックはサンヨーの電池技術が狙いで傘下に入れましたが、永年の技術・人材込みで中国だけには売って欲しくなかったと思います。
by Silvermac (2012-02-16 10:09) 

駅員3

経済は生き物とはよく言ったもので、なかなか理屈通りには動かず、時として、予想だにしなかった動きなどもあったりして、ますます解りづらいものにしています[揺れるハート]
by 駅員3 (2012-02-16 13:07) 

sonic

感覚的には「100年デフレ説」の方がしっくりきますね。
一度読んでみたい本です。
by sonic (2012-02-16 13:29) 

Azumino_Kaku

いいだや さん、
shin.sion さん、
guayabo さん、
tsun さん、
yuzuhane さん、
tsworking さん、
sonic さん、
今造ROWINGTEAM さん、
駅員3 さん、
Silvermac さん、
お茶屋 さん、
YUTAじい さん、
Ren さん、
toku さん、
斗夢 さん、
ryo1216 さん、
HAtA さん、
xml_xsl さん、

こんばんは、

ご訪問ありがとうございます。


☆ Silvermac さん、

ハイアールですね。
白物家電はいずれキャッチアップされるとの読みで、思い切って、切ったのでしょうか。

パナソニックはなりふり構わないリストラをすすめていますね。


☆ 駅員3 さん、

現実経済の動きはたしかにわかりにくいですね。
とはいえ、ちょっと引いた視点で、大きな流れをつかんでいく努力は続けたいと思っております(^_^)



☆ sonic さん、

ありがとうございます。
「百年デフレ」はやや難解、かつ、文庫本の割には厚い(440ページ)ですが、読み応えは十分です。
by Azumino_Kaku (2012-02-16 23:11) 

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