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我、バブルに踊らず [「現代日本経済論」]



世間はリフレ政策一色ですが。

こんな本を買った。吉川先生はケインジアン、マクロ経済の大御所ともいえる存在でしょう。

デフレーション―“日本の慢性病

デフレーション―“日本の慢性病"の全貌を解明する

  • 作者: 吉川 洋
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2013/01/19
  • メディア: 単行本

昨今の経済学はご存知のように、新古典派とケインズ派という大きな流れがあります。
(30年くらい前・・・私の学生時代・・に主流というか、元気だったマルクス経済学は最近元気がありません。個人的には、今でもマルクスの余剰価値説などは有効だと思っていますが。)
アベノミクスの後ろ盾の浜田さんや、黒田日銀総裁、岩田副総裁は、リフレ派、もしくは貨幣数量説を取る人々。新古典派の中でもマネタリスト、マネーサプライで物価が決まるとする人々です。
そもそも新古典派は、市場での価格調整で需給のバランスが調整されると主張します。
対するケインズ派は価格の下方硬直性を主張し、市場の調整能力を疑問視します。

現実の経済学の教科書を見ると、新古典派、ケインズ派のどちらかに肩入れするよりも、両者のバランスを取ろうとするものが多いようである。

たとえば、わが国のマクロ経済学の標準ともいえるほど人気のある中谷巌・入門マクロ経済学(日本評論社)は、事象を長期と短期に分け、短期ではケインズ派(価格硬直性あり、市場の調整が効かない)の考えを適用し、長期では新古典派(市場による調整)の考え方を取り上げるなど、両者のバランスをとっており、このような考え方は経済学の世界では幅広い支持を得ていると思われます。

入門マクロ経済学 第5版

入門マクロ経済学 第5版

  • 作者: 中谷 巌
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2007/03/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

またマンキューのマクロでは、「ケインズ派と古典派の主張を統合しようと」試みている。

マンキュー マクロ経済学(第3版)Ⅰ 入門編

マンキュー マクロ経済学(第3版)Ⅰ 入門編

  • 作者: N. グレゴリー・マンキュー
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 単行本


つまり、ひと昔のマルクス主義とか、教条主義の世界ならばいざしらず、経済学はしょせん、現実を説明するためのツールに過ぎない。そう割り切るのならば、現実をよりよく説明できる理論が優れているのであって、世の中の多くの経済学者にとっては何々派VS△△派の論争は実は”どちらでもいい”話のはず。つまり、経済学の世界で〇〇派の旗印を立ててそれに固執したところでロクなことはないというのが常識だと思います。


そう考えると、貨幣数量説という”教条主義”にかたくなに立てこもり、それを後ろ盾に危険な経済実験に走ろうとしている政府と日銀の政策は、時代錯誤といえないだろうか。
(1960-70年代の学生運動でもあるまいに。)

一国の経済を左右する立場にあるならば、党利党略に走らず、特定の党派に肩入れせず、是々非々で現実をよりよく説明できる理論を探求し、有効な政策を模索すべきではないのだろうか。

不勉強ないち学生の私は、マネーサプライがインフレ率を決めるとする貨幣数量説には疑問を持っています。
お金が足りないから景気が悪く、投資が上向かないという理屈では、最近の金融論での常識、すなわち戦後長らく資金不足だった企業部門の大幅な資金余剰を説明できない。
利回りのよい有利な投資先が見当たらない(注)から、金利も上がらないし、景気も良くならないと考えるのがまっとうな考え方ではないのか。
(注:投資家が見つけやすいところに見当たらないだけの話しであって、可能性がないわけではない。21世紀の有力な産業を掘り起こして育成するような政策こそが今必要なはずだ。)

前の記事でも紹介しましたが、先進国での利子率の低下は実物投資での利回りの低下が原因という、水野和夫さん(埼玉大大学院客員教授)の「百年デフレ」説を支持しています。
物価水準は一国の通貨政策で決まるのではなく、実物経済要因で決まるというほうが説得力があると思う。
(この本はまだ積ん読ですが)

金融緩和で市場にあふれたマネーが、有利な運用先をもとめてさまい歩き、あちこちでバブルが多発する。(日本では国債の買い入れに流れているようです。)

バブルはしょせん、泡沫。いつか泡は弾け、信用縮小などの経路で実体経済を傷つける。
この考えを利用すれば、先般大騒ぎになった、アメリカのサブプライムローンや原油や穀物に流れ込む投機マネーの流れ、ちょっと遡ってアジア通貨危機やアメリカのITバブル、そして狂乱地価に踊った1990年代の日本のバブル経済などもうまく説明がつきそうである。

100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)

100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)

  • 作者: 水野 和夫
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 文庫

水野さんは「(21世紀には)インフレ政策で、経済が回復することはない」(同書 p22)と断言しています。
水野さんの立場をとるなら、今の政権(および日銀)の政策は言語道断。
(短期的に景気が上向くなどの利点があるかもしれないが)長期的には百害あって一利なし、となるでしょう。

私たちはバブルに浮かれるのではなく、自分の頭でしっかり考え、冷静に経済の行く末を見極めて行動すべきです。

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コメント 4

Silvermac

学問としての経済と実体経済、例え所得が上がったとしても、バブル時代のような消費意欲が出てくるためには、何が必要でしょうか。
by Silvermac (2013-03-23 05:32) 

獏

最近の経済情勢は
もしかしたら全く新たな理論論理を必要としているのでは?
と無知なオッサンは思うときがあります(@@;))

by 獏 (2013-03-23 05:55) 

駅員3

う~ん、経済学・・・一番苦手な分野です(^^;
その次に苦手なのが、今取り組んでいる分野・・・(--;
by 駅員3 (2013-03-23 13:07) 

Azumino_Kaku

sugoimono さん、
tsworking さん、
tsun さん、
devil さん、
K さん、
eniguma さん、
駅員3 さん、
(。・_・。)2k さん、
お茶屋 さん、
いっぷく さん、
なんだかなぁ横濱男です さん、
Ren さん、
ma2ma2 さん、
YUTAじい さん、
獏 さん、
Silvermac さん、
ヤッさんパパ さん、
yuuri37 さん、
銀狼 さん、
ryo1216 さん、

こんばんは、ご訪問ありがとうございます。



☆ Silvermac さん、

現在の政治家は、必要以上に過去の経済学者の考えに拘束される傾向があると聞いたことがあります。
それだけ経済理論の影響(責任)は大きいようです。

消費が伸びるために、必要なこと、
年金などの社会保障や財政などに国民が抱えている漠然とした不安感を払拭することが一番でしょうか。




☆ 獏 さん、

同感です。
私も、今の世界は、既存の経済理論で説明がつかない状況に直面していると考えたほうが良いかもしれないと思うことがあります。




☆ 駅員3 さん、


ええ? ホントですか^_^; 大変ですね。

たしかに経済学はとっつきにくいですね。

一度、効率よく経済学を勉強するやり方をご紹介できればと思います。

by Azumino_Kaku (2013-03-23 23:04) 

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