SSブログ

暮らしの質を高める公共投資を [日々つれづれ]



マクロ経済学の入門編では、IS-LM分析を学びます。財市場と貨幣市場が一定の利子率で均衡する。財政政策を行なうとIS曲線が右上方にシフト、金融政策ではLM曲線が右下方にシフトし、いずれも国民総生産が増えるというものです。(開放経済ではこれにBP曲線が加わります。)

現実の日本経済では、流動性のワナに陥っているとかいろいろ議論がありますが、いずれにしても、金融政策、すなわち貨幣の流通量(マネーサプライ)を調整しての政策の効果は限定的ではないかと私は考えています。(将棋でいえば手詰まりの状態でしょう。)
もし金融政策が利いているなら、もうとうの昔に効果が出ているはずではないか。(もちろんマネーサプライ増→円安誘導→輸出に有利→国内総生産を増やすという経路の効果は否定できませんが。)
日本経済はもっと別の要因で停滞していると考えています。
将来の不確実性を考慮した消費の冷え込み(過剰な貯蓄)もその原因のひとつではないでしょうか。

また企業などの対外投資が盛んな一方、国内への投資は動きが鈍い。
昨日のニュースで、国交省の懇談会で首都高を地下化して東京の景観を改善する議論が始まったという報道がありました。

国内の都市の景観をもっと美しくする。
都市部の通勤地獄を緩和する。(国会で政策を作る人たちは、満員電車に乗る庶民の苦しみを理解しないのだろうか。)

新幹線や高速道路もさることながら、都市の暮らしの質を高める投資にもっとお金を回してほしいものです。
大都市に住む人々は、所得水準などで測れるほどの豊かさを実際には実感できていないと思います。高い生活コストで入ってきたお金は右から左。
地域社会での人々の交流を促すような街づくりも大事です。
絆、絆というけれど、戦後高度成長の中で日本社会の地域コミュニティはとうに解体してしまっています。
人口減少といいながら子育て支援は限定的、0歳児の待機児童はなかなか減りません。施設を増やすだけでなく、働き方のルールを変え、子育て世代が休みを取りやすく柔軟に働けるようにするなどの工夫が必要だと思います。

おそらく、戦後から高度成長を引っ張ってきた社会の価値観に変わるべきポリシーを私たちはまだ見出せていないのでしょう。
かつてモウレツからビューティフルにという標語がありましたが、新しい世紀にふさわしい、真の豊かさを実感できる社会を構築するための思想的な裏づけが必要だと感じます。


nice!(25)  コメント(5)  トラックバック(0) 

nice! 25

コメント 5

斗夢

デフレでは物価が安くなると思っていましたが、物価は安くなっていますか?スーパーで買物をすると上がるものはあっても値下げするものが見えません。
そんなことを思っていたら、わたしのいう物価が高い安いは収入を基準にしているんだなと^^。
by 斗夢 (2012-04-13 05:36) 

Silvermac

真の豊かさとは何でしょうか。
戦後は苦しかったですが、心は豊かでしたね。
by Silvermac (2012-04-13 06:52) 

ドラもん

このところ少し忙しくご訪問が滞りました。引き続きよろしくお願い致します。
by ドラもん (2012-04-13 11:10) 

moz

いろんな意味で新しい価値観が見えない、分らない・・・そんな感じでしょうか??
ただ、先が見えないことに不安だけが増している。若い人たちは貯蓄が趣味なようになっているし、特に買いたいものも見当たらないようです。ブータンのような例もありますが、心だけでは成長はないと思うし・・・、でも、何を軸にするのかは良く議論して考えていかないといけないのでしょうね。
by moz (2012-04-13 20:33) 

Azumino_Kaku

yanasan さん、
K さん、
moz さん、
gen さん、
さきしなのてるりん さん、
tsun さん、
koh925 さん、
Tomie さん、
tooshiba さん、
駅員3 さん、
ドラもん さん、
shin.sion さん、
マチャ さん、
お茶屋 さん、
ryo1216 さん、
charingo さん、
tsworking さん、
YUTAじい さん、
Silvermac さん、
キャラハン さん、
斗夢 さん、
Ren さん、
HAtA さん、
xml_xsl さん、




こんばんは。
ご訪問ありがとうございます。



☆ 斗夢 さん、

同感です。マスコミがデフレデフレと言う割には物価は下がっていないようです。
欧州からの輸入品の一部が価格を下げているくらいではないでしょうか?
むしろ原油価格や資源価格、小麦など食糧価格の高騰などが利いて、じりじりと物価が上がる感じがします。
また円安に振れていますので、この傾向が強まりそうです。

理論経済学者(東京大学の大瀧雅之教授など)は、「今の日本経済はデフレではなく、ディスインフレである」と主張しています。

デフレは連続的な物価の下落をさしますが、今の状況は、物価上昇率の鈍化なので、デフレではないというわけです。

デフレでないのに、デフレの対策をするのはまちがっていると主張しています。


☆ Silvermac さん、

哲学的な問いになりましたね。でもそれは大事な設問だと思います。

私の意見ですが、それは社会の誰しもが心の余裕を感じられる社会だと思っています。

今は貨幣的な豊かさはありますが、余裕がありません。

戦後は、国民が心をひとつにして、貧しさからの脱出を夢見て頑張れた、良い時代だったのかもしれませんね。


☆ ドラもん さん、

こちらこそご無沙汰しております。
私のほうは、松本の歴史や街の様子について調べる準備をしております。

資料収集や街の様子を観察するために何度か信州にお邪魔する予定です。

その節はどうぞよろしくお願いいたします。


☆ moz さん、

同感です。

大学生の息子との間の世代の隔絶感はかなりのものがありますね。
私は戦後の名残が残る、貧しくも、皆が肩を寄せあい助け合っていた時代(昭和38年)に生まれ、高度成長、列島改造ブーム、バブルを経て、今に至るわけですが、彼らにはそのプロセスがありません。
生まれたときから経済は低成長。
私たちとおなじように頑張れというのも無理があるのかなと思うようになりました。

おっしゃるように、世代間のギャップ、地方と都市のギャップ、震災や原発の被災地とそれ以外の地域のギャップ・・を拡げるのでなく、共感できる価値観を何か打ち立てないと、社会がばらばらになってしまうように思います。

どんな価値観を軸にしたらいいか、議論をふかめる必要がありますね(^_^)
by Azumino_Kaku (2012-04-13 23:31) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0