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日本経済に必要なこと [「現代日本経済論」]

「景気回復 歩み緩やか 3期ぶりプラス成長 原油安支え、所得増カギ」(日経 2月17日朝刊一面)

生涯教育ということで、ここ7年ほど都内の大学で経済学の勉強に取り組んできまして、思うこと。「景気を回復してもしょうがない。」「1990年代のバブル経済とか、その前の高度成長のような経済成長を望んでもそんなものは二度とおきない」ということ。それは短期的に所得が増えたり、景気がよくなるのは結構なことですが、そんなものは長続きはしません。もっと長期的な視点が必要。こちらでも繰り返しご紹介している水野和夫さんのような視点(例:21世紀に入り、資本主義が終焉を迎えている・・)が必要です。

わが国経済にとって、必要なのは、高齢化が進む社会の現実を直視し、その実態にあったものに社会経済構造を組み替えていくこと。私の卒業論文も、微力ながらその線に沿った形で執筆を進めております。

さて、運動のほうは、1日20-40分程度、LSD(Long Slow distance)強度で、ランならば、キロ7分程度のゆっくりしたペースで行っています。(専門的で恐縮です。) 運動量自体はたいしたことがない、しかし継続は力なりを地で行く年にしたいと思っています。


「期待」の経済学 [「現代日本経済論」]

正月休みの間に、たまった本だの雑誌を読もうと思っています。
なかなか進まないのですがねぇ・・家にいるとあれこれ片付けがあるし、出かければ出かけたで・・。

ということで、この雑誌(週刊 エコノミスト 2013年9月10日号 毎日新聞社)の特集は、「”期待”の経済学」。
アベノミクスの理論的バックボーンを検証しようとするものです。
けっこう面白そうですよ。

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師走の寒波 [「現代日本経済論」]



日本経済論のスクーリングは、二回目の課題を提出しました。公共事業頼みの時代は終わったが、ではそれにかわるものは何だろう。重い問いかけを残して前回の講義が終わりました。
高度成長までは明るい話題もあるのですが、バブル崩壊以降現在に至るまであまり明るいトピックがないように思います。わが国の先行きに関して、絶望することはないかもしれませんが、手放しで喜べるほど甘くもない。
週末は復習をしなくては。

12月も半ば、クリスマス寒波というには早いかもしれませんが、冬型の気圧配置が強まっているのか、冷えますね。




2002-2006年の景気回復期の意味とは [「現代日本経済論」]




日本経済論、前回の講義では、2002年から2007年までの、”いざなぎ越え”とよばれた、小泉政権時代の景気回復期のことも取り上げられました。

新自由主義的な政策、特に”土建国家からの脱却”という命題は正しいとしても、それでどうにか食いつないでいた地域はどうなるんだという視点が欠けていたのだと私は思います。
それは、小泉さんが、都市部出身(たしか神奈川県横須賀でしたね)だからでしょうか。
”自民党をぶっ壊す”といわれていたようですが、実際には”地方経済がぶっ壊れた”というのが私の印象です。


東京国際空港 国際線ターミナル(その6) 食糧安保 [「現代日本経済論」]

朝、朝食前に庭の植物に与える肥料を買いにホームセンターに行く。
売り場ではなす、トマトなど夏に収穫する植物の苗木を売っています。
ホームセンターは朝早くから、けっこう込んでいました。早めに行って正解でした。

別にこの本を読んだから、家庭菜園でも・・というわけではないが。
この本を読むと、わが国の食糧事情がいかに危ういバランスの上に成り立っているか良くわかります。
食糧自給率が話題になります。
畜産物の肉を生産するために必要な飼料の量。
鶏肉1Kgあたり4Kg、豚肉1kgあたり7kg、牛肉1kgあたり11kg。(同書p78)
飼料用のトウモロコシなどは輸入に依存しているので、何かの事情で輸入が滞ると国内の畜産は大きなダメージを受ける。
今は、スーパーなどで簡単に入手できる畜産品が貴重品になるような事態も想定できない話ではありません。
経済学の基本的な考え方である、比較優位説は、戦争や干ばつなどの特殊事情は捨象して平時にお金を出せばいくらでも海外から輸入できるという想定で考えていますから、前提条件が変われば、議論が成り立たなくなります。
つまり輸出する側の事情で輸入が止まったり、円安がさらに進むと輸入品価格が高騰して庶民の手の届かない高嶺の花になるという事態もあるでしょう。
(ここまで読まれた方は、経済学者が主張する、”わが国は農業なんかやめて、もっと高度な産業に注力したほうがいい”という言説の危うさ、根拠の薄弱さに、もうすでに気がついたと思います。)

高級化粧品やブランド品のバッグや時計であれば、ガマンしても命に別状はないでしょうが、モノが食糧となれば話は別です。安定供給が国民の生命にかかわってきます。

同書でも、そのような事態を想定した、食糧安保マニュアルというのが紹介されています。(同書pp.93-94)
そのメニューを見ると、ご飯と芋、ぬか漬け、夕食に焼き魚といったメニュー。
畜産品だけでなく、マヨネーズもドレッシングも、卵や油脂(コーンや大豆などの植物油)ですから、ぜいたく品になるでしょう。そうなると野菜サラダもぜいたく品ですか。。
そうなると、今は安価な外食の代表選手のようなハンバーガーや牛丼がぜいたくな食事になるのだろうか。

おそらく上記は極端な話です。
それにしても他国に迷惑をかけず自給自足を目指すスイスのように危機感を持って食糧安保を考えるべきではとつよく思いました。
最悪の事態を想定して対策をとるのが危機管理でしょう。
またイギリスのフィッシュアンドチップスのような、国産の資源でつくれる国民食のメニューを考えるのも良いことではないでしょうか。

本書も指摘するように、TPPもけっこうですが、まずは現状をしっかり把握した上で、これからのわが国をどのようにしたいのか、わたしたち国民がしっかり議論をつくすことが重要だと思います。

日本の食糧が危ない (岩波新書)

日本の食糧が危ない (岩波新書)

  • 作者: 中村 靖彦
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/05/21
  • メディア: 新書


羽田空港、国際線ターミナル展望デッキで着陸機をとらえる写真からお届けしています。
14:55分頃、RWY34Lに下りてくる全日空の飛行機・・。
彼方に見えるのは三浦半島か。
望遠レンズを通すと、遠景が引き寄せられて見えます。
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滑走路に向かって徐々に高度を下げていきます。
見ているほうも緊張します。
コクピットで飛行機を操縦している人たちにとっては大変な時間帯だと思います。
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特定が難しいですが、おそらく機材はB767-300。
時刻表から、高知発 全日空566便ではないかと推定しました。
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ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史〈9〉 (岩波新書) [「現代日本経済論」]

昨日は父の病状の件で、主治医に呼ばれて説明を受けにいったわけですが、つくづく思ったのは、医療現場でのコミュニケーションの難しさ。
高齢で寝たきりも長く衰弱しているので、いつ何があってもおかしくない状況ではあるものの、
「緊急に生命の危機があるから集まってほしい」
というわけではなく、
「対面できちんと当事者に説明をし了解を得たうえで治療を行ないたいから今日集まってほしい」
ということでした。
私は誤解して、最終通告かと思ってそのつもりで駆けつけたのでした。

いずれにしても関係者間での合意が取り付けられ、おかげさまで実りのある集まりとなりました。
しばらくは臨戦態勢が続きますので、心の準備、そして体調を整えておきます。

スーパーで安曇野の水を見つけた。
どうやら母の実家のある堀金の工場で採水しているようですね。

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前の記事で「1980年代の日本は、現代の日本と決定的に何かが違う」という問題提起をしました。何がその違いをもたらしたかについては諸説あると思いますけれど、そのような考察をするにあたって基礎的な認識を深めるのにこの本を読むことにしました。

「日本社会にとって90年代は、その存立の根底が揺らぎ、同質性が失われていく未曾有の危機の時代であった・・」(帯のコピーより)
バブル崩壊、国鉄分割民営化など中曽根政権による新自由主義的諸政策、労働運動の低迷、非正規雇用の増加、オウム真理教の事件、阪神淡路大震災、国内産業の空洞化、インターネットや携帯電話の普及などといったイベントを通して、日本社会がいかに変質していったかを描写しているのだと思います。
やはり同書でも90年代に、日本社会が大きな転機をむかえたという説をとっています。
そのことは、前の記事に書いた私の感覚(80年代と90年代では、時系列としての連続性はあるが、両者の間に質的に大きな差異が存在する。)とも符合します。

私は吉見さんの本を読むのはおそらく「都市のドラマトゥルギー」に続いて二冊目。
私自身この本の対象になっている70年代以降、同じ時代を生きてきたので、その時代を知らないわけではありません。
しかしながら、日々の生活に精一杯で、その時代におこったことを歴史的に意義づけして解釈するような余裕はなかった。
そういう意味ではいい機会ですから、80-90年代のことを見直してみようと思っています。
自分が立てた問いの答えが見つかるかもしれません。

ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史〈9〉 (岩波新書)

ポスト戦後社会―シリーズ日本近現代史〈9〉 (岩波新書)

  • 作者: 吉見 俊哉
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/01/20
  • メディア: 新書

財政破綻は回避できるか [「現代日本経済論」]



異次元の金融緩和で思わぬ副作用が出た形になっています。

財政破綻は回避できるか

財政破綻は回避できるか

  • 作者: 深尾 光洋
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2012/07/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

先日紹介した深尾光洋「財政破綻は回避できるか」 日本経済新聞出版社 2012年 では、「日銀の能力を買いかぶりすぎていないか」「金利がゼロに近づいた状態で、日銀のデフレを止める能力には限界がある」(同書pp124-125)と量的緩和の効果に否定的な見方をとっています。(昨年7月の出版なので、出版当時は民主党政権で、アベノミクス導入前の話です。)

140ページくらいとページ数も少なく、かつ簡潔な表現も手伝って、割合あっさりと読み終わりましたが、非常に重たい内容です。
このまま漫然と無策のまま進めば、破綻は間違いない。
このまま進むと、悪性のインフレが進み、そして「インフレ税」の最終負担をするのは私たち庶民ということになります。(もしアベノミクスがそこまで考えているとしたら大したものです。) 
悪性のインフレがおきれば、名目で固定された賃金や年金に頼る庶民の暮らしは困窮します。

2%のインフレ目標などといって浮かれている場合か?

インフレにしてもデフレにしても、「法律によらない(正当化できない)所得/資産の再配分を副作用としてもたらす」ということを忘れるべきではないでしょう。(吉川洋 マクロ経済学 第二版 岩波書店 p175)

赤字の帰結を受益者たる国民が負担するのは当たり前といえば当たり前かもしれませんが、理不尽なインフレ税に比べたら、議会のコントロールの利く増税による財政再建のほうがはるかに公平といえます。

いたずらに問題を先送りせずに、可及的すみやかに長期的に持続可能な財政構造に組み替えていくことが政治の課題と考えます。

さてあさってから連休後半、皆さん、どちらかお出かけですか?
私はとくに予定がないですが、近場の墓参りか、成田空港に飛行機でも見に行こうかなと思っています。


我、バブルに踊らず [「現代日本経済論」]



世間はリフレ政策一色ですが。

こんな本を買った。吉川先生はケインジアン、マクロ経済の大御所ともいえる存在でしょう。

デフレーション―“日本の慢性病

デフレーション―“日本の慢性病"の全貌を解明する

  • 作者: 吉川 洋
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2013/01/19
  • メディア: 単行本

昨今の経済学はご存知のように、新古典派とケインズ派という大きな流れがあります。
(30年くらい前・・・私の学生時代・・に主流というか、元気だったマルクス経済学は最近元気がありません。個人的には、今でもマルクスの余剰価値説などは有効だと思っていますが。)
アベノミクスの後ろ盾の浜田さんや、黒田日銀総裁、岩田副総裁は、リフレ派、もしくは貨幣数量説を取る人々。新古典派の中でもマネタリスト、マネーサプライで物価が決まるとする人々です。
そもそも新古典派は、市場での価格調整で需給のバランスが調整されると主張します。
対するケインズ派は価格の下方硬直性を主張し、市場の調整能力を疑問視します。

現実の経済学の教科書を見ると、新古典派、ケインズ派のどちらかに肩入れするよりも、両者のバランスを取ろうとするものが多いようである。

たとえば、わが国のマクロ経済学の標準ともいえるほど人気のある中谷巌・入門マクロ経済学(日本評論社)は、事象を長期と短期に分け、短期ではケインズ派(価格硬直性あり、市場の調整が効かない)の考えを適用し、長期では新古典派(市場による調整)の考え方を取り上げるなど、両者のバランスをとっており、このような考え方は経済学の世界では幅広い支持を得ていると思われます。

入門マクロ経済学 第5版

入門マクロ経済学 第5版

  • 作者: 中谷 巌
  • 出版社/メーカー: 日本評論社
  • 発売日: 2007/03/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

またマンキューのマクロでは、「ケインズ派と古典派の主張を統合しようと」試みている。

マンキュー マクロ経済学(第3版)Ⅰ 入門編

マンキュー マクロ経済学(第3版)Ⅰ 入門編

  • 作者: N. グレゴリー・マンキュー
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 単行本


つまり、ひと昔のマルクス主義とか、教条主義の世界ならばいざしらず、経済学はしょせん、現実を説明するためのツールに過ぎない。そう割り切るのならば、現実をよりよく説明できる理論が優れているのであって、世の中の多くの経済学者にとっては何々派VS△△派の論争は実は”どちらでもいい”話のはず。つまり、経済学の世界で〇〇派の旗印を立ててそれに固執したところでロクなことはないというのが常識だと思います。


そう考えると、貨幣数量説という”教条主義”にかたくなに立てこもり、それを後ろ盾に危険な経済実験に走ろうとしている政府と日銀の政策は、時代錯誤といえないだろうか。
(1960-70年代の学生運動でもあるまいに。)

一国の経済を左右する立場にあるならば、党利党略に走らず、特定の党派に肩入れせず、是々非々で現実をよりよく説明できる理論を探求し、有効な政策を模索すべきではないのだろうか。

不勉強ないち学生の私は、マネーサプライがインフレ率を決めるとする貨幣数量説には疑問を持っています。
お金が足りないから景気が悪く、投資が上向かないという理屈では、最近の金融論での常識、すなわち戦後長らく資金不足だった企業部門の大幅な資金余剰を説明できない。
利回りのよい有利な投資先が見当たらない(注)から、金利も上がらないし、景気も良くならないと考えるのがまっとうな考え方ではないのか。
(注:投資家が見つけやすいところに見当たらないだけの話しであって、可能性がないわけではない。21世紀の有力な産業を掘り起こして育成するような政策こそが今必要なはずだ。)

前の記事でも紹介しましたが、先進国での利子率の低下は実物投資での利回りの低下が原因という、水野和夫さん(埼玉大大学院客員教授)の「百年デフレ」説を支持しています。
物価水準は一国の通貨政策で決まるのではなく、実物経済要因で決まるというほうが説得力があると思う。
(この本はまだ積ん読ですが)

金融緩和で市場にあふれたマネーが、有利な運用先をもとめてさまい歩き、あちこちでバブルが多発する。(日本では国債の買い入れに流れているようです。)

バブルはしょせん、泡沫。いつか泡は弾け、信用縮小などの経路で実体経済を傷つける。
この考えを利用すれば、先般大騒ぎになった、アメリカのサブプライムローンや原油や穀物に流れ込む投機マネーの流れ、ちょっと遡ってアジア通貨危機やアメリカのITバブル、そして狂乱地価に踊った1990年代の日本のバブル経済などもうまく説明がつきそうである。

100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)

100年デフレ―21世紀はバブル多発型物価下落の時代 (日経ビジネス人文庫)

  • 作者: 水野 和夫
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/04
  • メディア: 文庫

水野さんは「(21世紀には)インフレ政策で、経済が回復することはない」(同書 p22)と断言しています。
水野さんの立場をとるなら、今の政権(および日銀)の政策は言語道断。
(短期的に景気が上向くなどの利点があるかもしれないが)長期的には百害あって一利なし、となるでしょう。

私たちはバブルに浮かれるのではなく、自分の頭でしっかり考え、冷静に経済の行く末を見極めて行動すべきです。

リフレはヤバい(ディスカバー携書) [「現代日本経済論」]



日銀の政治からの独立性もへったくれもなくなりましたね。目的のために手段は選ばないというのはありなのでしょうか。
いったい何のための中央銀行制度なのかと思います。
これくらいの金融政策で問題が解決するならば、とっくのとうに日本経済の問題は解決しているのではと思います。

下の本、アマゾンの書評は散々ですが、私はけっこう面白く読みました。
そこで辛口のコメントを書いている人は、おそらくマクロ経済や金融の詳しい知識を持っている(少なくとも私よりは詳しそう)ように思う。明らかにそういう偏り(バイアス)がある。

つまり経済に詳しい読者が、リフレ政策の危険性について厳密な説明を求めているのに、この本にはそれがないじゃないかというわけです。

まあ、それはたしかにそうかもしれない。
ではこの本は経済に詳しい人が読むことを想定して書かれているだろうか。
私はそうではないと思う。この本は、一読すればわかるが専門家向けではなく、経済リテラシーがさほど高くない一般の人(私も含む)向けのようである。
(新書版だし。タイトルからして素人受けしそうな。かようなやくざ言葉で品がない表現は、私は好みませんが。)
となれば、厳密な記述よりも、直感的な記述、正確さよりも読みやすさを重視して書かれていると考えるべきではないか。
(以前、小暮太一さんの労働哲学の本の批判を読んだときも同様の感想を持った。おそらく読者にとっては釈迦に説法なのであろう。でも世の中には入門レベルの本も絶対に必要だし、需要は入門書のほうが専門書よりも大きいはず。)

つまり、この本は、金融や財政などにさほど詳しくない人が、アベノミクスと、そこに群がっておいしい思いをしようとしている人たちが何を考え、どのように行動しているかを概観するには格好のテキストではある。
しかし経済に明るいアンチリフレ派の読者が、後ろ盾や理論付けを求めて読む本ではないのだろう。
(このあたりが自分にあった本選びの難しいところですね。)

厳密な議論を求める方には、同じようなテーマで、野口教授の「金融緩和で日本は破綻する」(ダイヤモンド社)のほうが向いているように思います。(私はまだ買ってませんが)
ちなみに、この本も辛口のコメントが目立つ。
もしかするとリフレ派が政権を握ったので、アンチリフレ派はいらだっているのだろうか。
アンチリフレ派どうしで揚げ足取りをして、いったい誰が喜ぶかを冷静に考えたほうがいい。

(注)ちなみに私は、小幡さんのほかの本(「世界経済はこう変わる」2009年 光文社 神谷秀樹さんとの共著)も読んでいたので、もしかすると、小幡さんの語り口というか(お会いしたことはありませんが)主張になじみがあるのかもしれませんね。
どちらの本も、論文ではなく、口語体(会話?)で書かれています。
そういう意味(著者の意図を汲みやすい)でも同じ著者の本を続けて読むのは有効だと思います。

そうそう、しばらく時局もの経済書を読んでいたが、そろそろ自分の研究の文献も読まないと。
すでに材料は揃っているが昨年夏以降すっかりやる気を失っていました。
そろそろ再開しないといけない。

リフレはヤバい (ディスカヴァー携書)

リフレはヤバい (ディスカヴァー携書)

  • 作者: 小幡 績
  • 出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • 発売日: 2013/01/31
  • メディア: 新書

まだまだ寒波/ 「消費増税では財政再建できない」/ 所得移転  [「現代日本経済論」]

寒いですね。北日本での積雪の量も多い。東京あたりでも冷たい北寄りの風が強く吹いて寒さがしみます。立春も過ぎたのにね。

さて、現代日本経済論の、次の課題図書としてこの本を推薦します。著者は、日本経済論、ファイナンス論が専門の経済学者。
「消費増税では財政再建できない」というお題については、直感的に理解できるでしょう。5%の増税では誰がどうみても、焼け石に水です。 社会保障費の伸びに追いつかない。
というわけで、本書はほかにも、多くの論点を提供していますが、ここでは、一点、所得の移転について取り上げます。 (さきの経済政策学のレポートにもインフレによる所得の移転については言及がありました。)

「金融緩和で進んだのは、企業投資の増大ではなく、ネットの債務部門(企業と政府)の支払利子が減少し、家計の受取利子が減少した。企業が配当を増加させたので(中略)株式を所有する高額所得者の財産所得は増え、銀行預金しか持たない一般家計の財産所得は減少した。」(同書 pp.231-232)

つまり、先の金融緩和では、家計から政府(企業)へ、また一般家庭から富裕層への、それぞれ所得の移転があったと推察されるという。

一般的に、インフレは債権者から債務者への所得移転をもたらすといいます。名目で固定された債権債務額が、実質的に減価してしまうからです。インフレには他にも多くの弊害があります。
(参考文献: 中谷巌 入門マクロ経済学 第5版 日本評論社 pp.248-250)

アベノミクス(このお題はまた別途取り上げます)によって、経済情勢が変わると、また誰かから誰かへの所得移転が発生するでしょう。
(すでに円安で潤う輸出企業、円安にかけてきた投機筋、高騰する一部の株式市場などで狂ったとしか言いようがないブームがおきています。これが本当の景気回復ではないことを冷静な目を持った心あるひとは知っていて、冷ややかに事態を観察しているでしょう。)

しかも、それは合法的に、こともなげに、立法などの法的手続きを経ずに、静かに行なわれる。
もし額に汗して稼ぐことで成り立つ家計の所得が減り、その富が企業や政府や富裕層に回っているとしたら、それは私のように勤労者家計を預かる身としては許しがたいことです。

私たちはもっと賢くなってデタラメな経済政策には反対の声をあげなければならないと思います。(私はいわゆるリフレ政策には反対で、水野和夫さん(埼玉大大学院客員教授)の「先進国のデフレ脱却は困難説」を支持しています。)


消費増税では財政再建できない -「国債破綻」回避へのシナリオ

消費増税では財政再建できない -「国債破綻」回避へのシナリオ

  • 作者: 野口悠紀雄
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2012/01/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


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