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東京の都市計画 (岩波新書)その2 [街づくり]

東京の都市計画 (岩波新書)

東京の都市計画 (岩波新書)

  • 作者: 越沢 明
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1991/12/20
  • メディア: 新書
前回に引き続き、この本のご紹介です。
1991年の出版。
今は新刊では入手できないようですが、内容自体は明治期から戦後、東京オリンピックにかけての都市計画についてですから、出版から20年近く経ったとはいえ、本書の主張が内容的に色あせるものではないと思います。
(本書内で未開通と記載されている環状3号の麻布トンネルなど、出版後に開通している区間もありますが、環状三号自体は全線開通しているわけではないのです。つまり計画未達成という事実には変わりがありません。)

「住宅、交通、地価、みどり、防災・・今日、巨大都市東京が抱える都市問題は。昭和初期の計画の未達成や、戦災復興計画の挫折に起因するものが多い」(表紙扉)


東京の街を歩いていると「あれ?」と思うことが少なからずあります。(自転車でサイクリングをするともっとよく分かります)
計画道路が途中で途切れていたり、高速道路が妙なところを通っていたり。
それらの違和感の多くは、もしかすると上記でいうところの、昭和初期の計画未達だったりするかもしれません。

「人口500万人の時代に設計・計画し、しかも未完成の状態にある道路という根幹的な都市施設を東京圏人口3000万人時代に使用しているのである」。(同書 p.97)
つまり、現在の東京圏の道路渋滞は起こるべくして起こっているわけです。そもそも道路の容量計算(サイジング)が現状にあっていないのですから。
私の仕事はシステム管理ですので、広域データ通信(WAN)のサイジングを担当することがあります。東京の道路で起こっているようなこと(容量の上限を考えずにデータを流す・・)をもし仕事で行った日には、「仕事にならない!」と管理者の電話は鳴りっぱなしになるでしょう。
そのため、管理者は場合によっては帯域が足りないときに、データ流入量の規制を掛けることもあります。意図的にネットワークを遅くするわけですから、これはこれで「遅い!」という苦情がきますが、ボトルネックで渋滞を起こして全体が止まってしまうよりはよいと考えて、ネットワークを増強するなどの根本的な対策の準備を急いで行いながら、その場をしのぐほかありません。

ではいまの都政はどうかというと、ロードプライシングのような規制を掛けて、交通需要マネジメントをするわけでもない。私は前知事のとき、もしかすると本気でこのあたりの対策に取り組んでくれるのかと期待したこともありましたが、すべて肩すかしに終わったようです。(次の選挙で票につながらないような政策にはおそらく政治家は興味がないのでしょう。)

最近の都政のすすめ方を見ても、このような問題意識を持って行動しているとはとても思えないのです。(都市再生の名の下、法規制を緩めて超高層ビルを立て続けに建ててみたり、儲かれば何でもありという感じです。)

都市河川を埋め立てて作った首都高速道路をみてもわかるように、先人たちの遺した遺産を食いつぶして今の東京は成り立っているわけです。

これは東京都に限ったことではないですが、もっと骨太の思想と哲学を持って、まちづくり、国土形成にあたってほしい。
政治をつかさどるものは、百年後に、子孫たちに誇れるような街の姿、国の姿とは何かを明確に自分の言葉で語るべきです。

後藤新平のような、スケールの大きな政治家がいたらなあと思うのは私だけでしょうか。

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Silvermac

東京都はオリンピックまでに都市機能の耐震強化すべきだと思います。
by Silvermac (2014-08-29 05:19) 

Azumino_Kaku

nicolas さん、
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Silvermac さん、
ハマコウ さん、
ryo1216 さん、
なんだかなぁ! 横 濱男 さん、
K さん、

御訪問ありがとうございます。



☆ Silvermac さん、


ありがとうございます。

同感です。防災機能を強化。いわゆる木造賃貸アパート地帯や液状化、水害などへの備えを徹底的に行うべきですね。

by Azumino_Kaku (2014-08-29 22:36) 

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