「現場が神様」のまやかし [マネジメントのはなし]
私は、しばらく、ものづくり、いわゆる生産現場に身をおいていた。
あるとき、私は、地方の工場の片隅で、原材料の管理をしていた。
生産現場がエライ!
と 経営者は連呼していた。
「生産に関わる人が神様である」
と。
しかし、しばらくして、その実態を私は知った。
経営者は
「このままでは中国とのコスト競争に勝てない」
と毎月毎月、全社員を集めて説教をする。
いい加減、うんざりだ。
コスト競争でアジアの新興工業国に勝てるわけがない。
商品の企画をする人が都会から来た。
夏の暑い日であった。
神戸あたりの御曹司という風情の方が身に着けているのは、イタリア製のブランド品ポロシャツ。一着1万円以上はするだろう。
麻 ・・・アイリッシュリネン?・・ のジャケットと、パンツがよく似合う。
暑い盛り、高原に避暑に来られた、という風情。
少しの嫌味もなく、気品と教養を感じさせるような、尊敬に値する方であった。
私は、その方を、山向こうの協力工場にクルマでご案内した。
私の身に着けているのは、1000円で買ったワークシャツ、2000円のジーンズ、それに会社から支給された作業用のエプロン。
企画する人より、ものづくりをする人が偉いといっても、現実の世界はこんなものかと思った。
私の管理する原料で作る製品は、
末端価格? とはいわないか、
上代、というのか、小売の段階では、一点あたりの単価が20万円もするような、分類上「高級品」であった。
売上 X万 マイナス 原価 Y円 イコール 粗利益 Z 円
と、アタマの中でやってみた。
高等数学ではない、たんなる減算、引き算だ。
わが国なら、小学一年生どころか、幼稚園児でも出来るだろう。
利潤がどこに配分されているか?
マル秘の内部管理資料など見なくとも、想像力を働かせれば誰の目にも一目瞭然だろう。
来客は、現場での仕事を一通り終え、私は、その地域で行われる、夏祭り・・花火大会や、盆踊りの話をして、最寄りのJRの駅までお送りした。
華やかな都会で消費される高級な品物を、労務費の安い地方でつくる。
経営者はそれしか考えていないのだろうと想像できた。
そんなことはおくびにも出さず、「現場は神様だ!」
と連呼する。
現場に戻れば、強烈な労務管理が待っているのに。
「現場の神様」は霞を食って生きていればいいとでもいうのか。
資本主義の世の中、オカネがなければ生きていけない。適正な利潤分配があってしかるべきと考えるが、そのような発想はまったくなかった。
おそらく、そのような仕事や、利益の配分は、生産委託側と、受託側の力関係で決まっていたと推測できる。
工場はオタクだけではないから。
安いところでつくるから、おたくには頼まないよ。
それでおしまいだ。
現場で働く同僚たちは、果たして気がついていただろうか。
気がついていないのは私だけだったかもしれない。
今度、話を聞きにいってみよう。
メーカーは最高益を更新し、
それを製造する下請けたちは淘汰されていく。
名古屋駅前にでっかいビルを(日本で4番目に高いビル)
建てた会社もそうです。
金でいろんな解決をする。
その利益はどこから得たのか。。。
考えて欲しいっていつも思っています。
by jamaica (2007-01-29 13:13)
jamaicaさま、いつもありがとうございます!
名古屋、しばらく行っておりません・・(30年くらいまえ?)
親戚の家に泊まって地下鉄で動物園に連れて行ってもらったような・・おぼろげな記憶があります。
東海地方は、愛地球博覧会や、中部国際空港もできて、地域別、県別でみたら景気よさそうな感じするんですが、お話を聞くと明暗ありそうですかねぇ・・
東京は、結構はっきりしてます。親に文房具買ってもらえない子供がいる街もあるかと思えば、ヒルズ族がいたり・・・
たしかに金で何でも解決するって、マフィアとか、昔のどす黒い政治家とか、そういうイメージで、美しくないですよねぇ・・・
うーん、考えてしまいますね・・
by Azumino_Kaku (2007-01-29 21:19)